
映画:「孤高のメス」レポ。

監 督:成島出
脚 本:加藤正人
原 作:大鐘稔彦
キャスト:堤真一、夏川結衣、吉沢悠、中越典子、生瀬勝久、柄本明
余貴美子、成宮寛貴、松重豊
【ストーリー】
医師の派遣に始まり、治療に行き詰まると直ちに助けを求め、系列の大学病院の顔色を窺ってばかりの病院・さざなみ市民病院に、ピッツバーグで高度な外科技術を持つ当麻鉄彦(堤真一)が、市長の求めにより、赴任してきた。
それまでの緩慢な手術とは異なり、患者のことを考え、迅速且つ正確なオペを行う当麻の姿に、周りの医師・看護師達は魅かれ、共により良い手術体勢で臨もうと奮起する。
そんな中、市民病院の強化に努める市長が末期の肝硬変で倒れ、唯一彼を救う方法は、脳死状態の患者の臓器の移植のみ。
だが、脳死肝移植は、法では認められていない。
果たして、当麻は、市長の命は…。
冒頭。。。
患者を助ける事に、心血を注ぐ当麻を妨害しようとする第一外科医長の野本らの手術現場。
こういうのって現実にある。
某病院での出産時、帝王切開をする技術力が無い医者だった為、赤ちゃんは障がいを持って産まれた(裁判にて終結)。
最近になって、医療過誤訴訟を起こす為の患者さん側の負担も軽くなり、お医者さん自身の技術&モラルの向上がはかられていくんだろうと思う一方で、技術の進歩に伴うお医者さん達の寝る間も無いハードな現場も現代医療の問題点でもある。
そんなことを考えながらの鑑賞

映画の中でメインになったのは、脳死移植(映画では肝臓移植なので、脳死肝移植)。
まだ脳死判定基準も明確ではない時代に決行した、脳死ドナーからの肝臓移植。
当麻も、当初は、生体移植(映画では、移植部分が肝臓なので生体肝移植。)を検討するが、適合する臓器が無く、肝硬変で倒れた大川松男(柄本明)を救うには、脳死状態にある武井静(余貴美子)の息子:まことの肝臓を移植するのが唯一の方法になってしまう。
ドナー登録人口の少なさという問題が提起されているのを感じた。
先日の運転免許証に本籍表示が無くなり、ドナーになる事の可否を記載する欄が設けられるというニュースが思い浮かび

発端は、臓器売買事件

「腎臓を提供したのに代金が支払われない」との一本の電話から発覚

手術を行った病院がこちらの病院で、捜査を進めていくうち、修復腎移植(病気により摘出した腎臓の移植)が行われている事が解った。
2つある腎臓のうち、片方が病気になった場合に病気になった腎臓を摘出。
その際、その摘出した腎臓を人工透析を行っている患者さんに提供する。
移植を受けた患者さんは透析を行わなくてもよくなり、普通の生活ができるようになる。
日本臓器移植ネットワークに登録し、移植を待つ場合、日本の待機期間は、およそ16年。
待機患者のうち運良く移植が回ってくるのは、約1.6%。
多くの人が、移植を受ける事ができずに亡くなってしまう。
透析患者の10年後の生存率は40%。
一方、腎移植を受けた患者のそれは80%。
又、透析は延命のための処置であるのに対し、移植は根治療法。
生存率も透析の2倍。だそうだ。
修復した腎臓なのでリスクは伴うが、移植を受ける機会も増え、患者さん達は、人工透析のある日常から解放される。
宇和島徳州会病院の万波誠医師らによる病気腎移植を、関係学会は「閉鎖的な医療」だと批判。
厚生労働省は、原則禁止。但し、臨床研究においては可とし、後に都道府県などに「臨床研究の対象疾患に制限を設けない」と通知。
徳州会病院では、今年3月、がんを取り除いた妻の腎臓を夫に移植をする夫婦間修復腎移植手術を行っており、男性は5月、不整脈を原因とする心不全で亡くなった。
実は、病気臓器移植に関しては、裁判が提起されている。
「修復腎移植訴訟」。
患者原告弁護団は、過去の病腎移植の手続きを問題にしている学会幹部に対して、修復腎移植により助かる命があることが患者にとっては何よりも大切であること、修復腎移植の有効性を今後の裁判をとおして主張していきたい、と述べている。
修復腎移植を否定した側に対する患者達の側からの声である。
ちなみに、移植には、生体移植、死体移植、脳死移植、心臓死移植等がある。
映画で当麻が行った、脳死移植が日本で初めて行われたのは、1999年2月28日。
臓器の移植に関する法例施行後、国内初の法的脳死判定、臓器移植へ。
高知赤十字病院で脳死判定が行われ、臓器移植法に基づく日本初の脳死移植の幕が上がった。
心臓、肺、肝臓、腎臓。。。
「亡くなった人からの贈り物」が、「生きたいと願い、生きる事のできる可能性のある人達の命」へと繋がった瞬間である。
心臓と肺は大阪大病院へ、腎臓は国立長崎中央病院と東北大へ、肝臓は信大病院で待つ患者へ届けられた。
亡くなった人の想いが、死を覚悟した人に生きるチャンスを与えてくれ、移植を受けた人と一緒に、故人も生き続ける事ができる。
映画を見ながら、再び感動した

又、当麻の仕事への姿勢とそれをサポートする医師達や看護師、病院の人達等々。
「命」への尊厳と人への「思いやり」の姿勢。
清々しい気持ちになり、深く心に響いた。
看護婦だった母から聞いた話

手術中、できなくて、指導医に叱られた研修医が、手術後、泣きながら練習している姿を、よく目にしたそうだ。
厳しく指導してくれる指導医の先生や、指導に泣きながらでもついていこうとする研修医が存在し続けてくれる事を願う

なぜなら。。。
そういうお医者さんは、病気を治す事、患者さんの状態が改善する事を真剣に考えてくれているはずだから…。
ラストが近づくにつれ、切なくなった。
浪子がたらい回しの末、亡くなったという事は、何らかの形で当麻先生は病院からいなくなっているという事。
「君は素晴らしい看護婦だ。」
という当麻先生の言葉を胸に、ずっと働き続けた浪子の心の変遷はどうなったのだろう。。。
自分の病院で倒れた職員を他へまわす姿勢からは、微妙な環境だったのかもしれない…。
ナースキャップを初めてかぶった感動を呼び起こし、仕事への気概を持たせてくれた当麻先生の言葉を胸に、きっと奮闘していたのだろう。
職業人としての母の一面を垣間見た成宮寛貴君演じる弘平は、どんなお医者さんになるのだろう?。
きっと、母の理想とした医者への道を歩んでゆくのだろう。
亡くなった人の臓器が、生きている人の命の源へと繋がり、
親の生き様が、子供の人生の歩み方に繋がっていく。。。
心地良い感動と考える機会を与えてくれた映画

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首の回る扇風機やら懐かしい形の軽自動車やら、10円を入れる公衆電話やらの品々。
さらには、都はるみさんの「アンコ椿は恋の花」まで聞け、懐かしさでいっぱいになった

自分もこういう医師に診てもらいたいと思います。
ただ、映画として、敢えて苦言を呈するとすると、
人間臭さがやや薄い(演歌だけではなくもう少し世俗的面が欲しかった)点は惜しいと思いました。
それからせっかく当麻によって意識改革がなされた病院のはずなのに、
浪子がたらい回しで亡くなったのははちょっと解せませんでした。
ちっちゃかった生徒が、成長し自分を労ってくれる。嬉しいだろうね〜。
高知赤十字病院での脳死判定も、大々的にテレビ放送がありましたね。ヘリコプターが飛んでいたような(゚_゚
何かの本で、クローンとして生まれた主人公の話を読んだ事があります。
命を繋ぎ、この世で生きる方法が見つかった事に感謝しながらも、倫理的な問題もありますし、寿命をどこで折り合いをつけるか、検討する必要もあるのでは?、と思います。
本当に。当麻先生のように、親身になってくれるお医者さんが、傍にいてくれるといいなぁ、と思います。
もちろん、そういう先生についていく看護師さんや若いお医者さんも♪。
浪子がたらい回しで亡くなった件、私も疑問でした。
当麻先生についていったお医者さん達、病院長、復帰した大川さん、青木先生は一体???と…。
もしかしたら、医療費の回収不能による赤字で、病床数変更、在籍医師数の変更等も盛り込みたかったのかも?とも思います。
弘平が医師として働き始めてからの続編上映も期待中です☆。
真尋さん>品川君ブログで、ちらっと出演情報は得ていたので、楽しみでした〜。
冒頭、いきなりの登場には、びっくり!。
エスコートしてもらっている余さんが、ちょっぴりうらやましかったり(笑)。
いい俳優さんだなぁ。。。って思います。
昨夜のヤンメガでは、うるるん状態に…。
大地君もお医者様になれるといいなぁ☆。
魁さん>こんにちは〜。コメントありがとうございます(*^_^*)。
人間の望みはやっぱり「永遠の命」になっちゃうんでしょうかね?。
助かったり、治るのならもちろんそれがベストだと思います。いろいろと難しい問題もありますよね。
創造の神がいるのなら、今の世をどんなふうに思っているのかな?なぁんて思います。
この映画、もちろん観たのですが、まだアップしていません(汗)
でも何か新しいこと、それも生命に関わることであれば、
多少のリスクを承知でチャレンジするパイオニアは必要でしょうね〜
最後の刑事役は短いけれど大切な役回り。
TV「臨場」つながりですかねぇ・・・あのキャスティングは(笑)
要所要所で的確なキャスティングが活きていた作品でした!
「臨場」は未見ですので、わからないのですが、武井先生が、頑張って生きている姿を、そーっと見守る刑事さんの姿の演出は、いいなぁ(^^)と思いました(見守っているという理解でいいんですよね?)。
本当に魅力的なキャスト勢揃いの映画です。
夏川結衣さんが出演なさる〜と喜んでいたら、生瀬さんに余さん、柄本さん。
バチスタの栄光同様、堀部さんも悪キャラ?見事にハマってらっしゃいました。
今、原作を読んでいます♪。
医療のドナーについての問題は難しいですよね。
助けられる命を助けたいというのはまさに正論。
けれどルールがないまま行われていくのが常態になると、いかがわしい医療が行われるかもしれないという懸念もその通り。
ルールを作るということはそのどこかで線引きをしなくてはいけないわけで、どこで線引きをするのかがまた難しい。
これはオープンに話し合いを続けて、コンセンサスを得ていくようにしていくしかないのでしょうね。
コメント、ありがとうございます<(_ _)>。
技術料と現場状況が揃っているなら助けてくれる、そういうお医者さんに患者さんの側からすれば担当してもらいたいし、そういうお医者さんは、守られて欲しいと思いますが。。。
線引きも必要。。。難しいですね。
昨日、原作の外科医当麻鉄彦を読み終わり、現在、続編の神の手にはあらずを読んでいます。
翔子と当麻が、中越さんと堤さんとピッタリで、私の頭の中では、映像ができあがっています(笑)。
続編ができたら…、泣いちゃうかもしれません(秘)。