
映画:「善き人のためのソナタ」。
【監督】フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク

旧東ドイツの秘密警察・諜報機関シュタージを描いたドイツの作品で、アカデミー賞「外国語映画賞」を受賞しています。
話は、旧東ドイツで、反体制の疑いのある作家と恋人の女優を監視するよう命じられたシュタージ(国家保安省)の大尉が、作家のアパートに盗聴器をしかけ監視をはじめるところからはじまります。静かな流れの中で、盗聴を続ける大尉の心の変化と国のシステムによる人々の苦しい胸のうちが描かれていき…ラスト近くで大尉はある行動をとります。そしてその後…。どうなるのかドキドキしながらも少しホッとできたのは、「これからのドイツ」を示しているのかな、と思いました。
重いテーマがしっかり伝わる映画であるとともに、とても上品な清潔な映画でした。余韻がしばらく残り、なんとなく優しくなれる感じです。
ちなみに、シュタージとは旧東ドイツの国家保安省のことで、国内の反体制の人々を監視・逮捕するため1989年のベルリンの壁崩壊まで約40年間、存在していました。職員約10万人とか。
また、正式にはシュタージには属していない民間人で、人知れず家族や友人のことをシュタージに密告していたIM(インオフィツィエラー・ミットアルバイター)と呼ばれる協力者も約17万人存在していたそうです。
ベルリンの壁崩壊後、監視されていた人々の個人情報記録は、本人の請求で必要に応じて閲覧できるようになりましたが、そこで家族や親友が実はシュタージの協力者であったという事実を知った方もいらっしゃるようです…。
ただ…大切な人や自分を守るために、恋人や家族までも密告せざるを得ない方達もいたかもしれないようで、誰かを悪人として責めるようにはなっていないところも、この作品を私がいいなぁと思った理由です。
ベルリンの壁崩壊時って確か日本はバブル期でマハラジャやジュリアナ東京ー!って記憶がありますが、同じ時期に旧東ドイツではこのような状況があったなんて驚きました。
映画には、常にどこかで監視されているかもしれない監視社会の恐ろしさも描かれており、よその国の過去の出来事ですが、これからの未来についても考えさせられる映画でした。
以前、鑑賞したレポートですが、今の時代だからこそ観て欲しいと思った映画です。
冷と暖、暗と明、非情と愛情を感じる事のできる映画。
よろしければ、ご覧になってみて下さい。
ラスト直前、祈るような気持ちになったもん。
暗闇に灯った明かりを感じさせてくれる。
本当にいい映画だよ。