2012年03月30日

舞台:「サド侯爵夫人」♪。

平成24年3月30日(金)晴れ

舞台:「サド侯爵夫人」。

sado.jpg

演  出:野村萬斎
脚  本:三島由紀夫
美  術:島次郎
照  明:齋藤茂男
衣  装:半田悦子
音  響:尾崎弘征
舞台監督:澁谷壽久
キャスト:蒼井優/美波/神野三鈴/町田マリー/麻実れい/白石加代子
あらすじ:
18世紀末、絶対王政が爛熟を極め、頽廃の色濃い都パリ。
数々の乱行からの逮捕・脱獄騒動を起こし、残酷かつ淫蕩なスキャンダルがつきまとう“悪徳の怪物”サド侯爵。
彼に、貞節を貫くサド侯爵夫人:ルネ。
世間体を重んじ、計略をめぐらせてサドとの離別を迫るルネの母:モントルイユ。
母と娘は、苛烈な対立を続ける。
時は経ち、フランス革命勃発後、夫:サドがついに獄から解放される事になる。
その事を知ったルネの決断は…。


三島由紀夫戯曲の最高峰と謳われる『サド侯爵夫人』

去年の今頃、蜷川幸雄さん演出の「ミシマダブル」にて、オールメール版を鑑賞(ちょっと寝ちゃった(^^;))。
ミシマダブル.jpg
サド侯爵のエログロな生活。
キュートな斗真アンヌと悪徳を演じる木場さん、大石さん、平さん、岡田さん達の演技から。。。
侯爵の妻とその妹と母、彼女等の協力者達の気高さと卑しさが垣間見えた。
美しい文脈で人間の欲望や本能を赤裸々に語る三島作品。
本を読むのは敬遠していたけれど…、難解な台詞達に彩られた舞台は、面白かった。

今回は、野村萬斎さん演出、キャストは女優陣6名の舞台という事で、観劇。
披露された作品は、驚異の舞台で、崇高且つ壮麗で感嘆に値する作品に、魅了されたぴかぴか(新しい)
目に見えない物語の背景や情景を、どのように魅せるかが狂言師の腕の見せ所の「狂言」。
話の世界に入れるかどうかは、演者の手腕と観客の想像力次第という「狂言の魅せ方」に、女優陣の「華」が加わったパワフルな舞台だった。

舞台装置や衣装は、いたってシンプル。
丸い円形の板の上にテーブル1つと椅子が2〜3個。
部屋中心部には、上下する鉛色のシャンデリアが一つ。
部屋は厚みのある石壁で囲まれている。
衣装は、登場する女性達各々の「性(さが)」を象徴する色味と形。
全員基本色は黒。
ルネ、は首元まである白とグレーを配した修道女風。
サン・フォン伯爵夫人は、ごっついヒール靴に鮮やかなブルーを配した乗馬服の女王様風。
アンヌはオレンジ色を配したりミニスカートになったりと、可憐な少女風。
シミアーヌ男爵夫人は、薄いピンクのふわふわの聖女風(後に、修道女服)。
モントルイユ夫人の衣装は、黒地に金をあしらった和洋折衷。
シャルロットは、黒の上に白のエプロンのメイド服。

サディズムという言葉の語源でもあり、今もなお不道徳の象徴とされるサド侯爵と関係するこの6人の女性達。
ルネは「貞淑」、ルネの母モントルイユ夫人は「法・社会・道徳」、シミアーヌ男爵夫人は「神」、
サン・フォン伯爵夫人は「肉欲」、ルネの妹アンヌは「女の無邪気さと無節操」、
召使シャルロットは「民衆」
を、各々象徴。
互いに、己の信じる道への想いを主張しぶつけあいながら築かれていく人間関係。
ロココ様式時代のフランス貴族達が、「美しく長い言葉達で語るのは、悪や肉欲」という非対称さが特徴のこの三島戯曲。

仕える立場のシャルロット(町田マリーさん)の心の変遷は、従順〜抵抗〜侮蔑〜自由へと向かう。

姉の夫と情事を繰り広げながら一緒に旅をしたアンヌ(美波さん)。
姉への優越感〜寂しさ〜新たな旅立ちを経て、無邪気でキュートな女の子は、大人の女性へと成長。

聖女な様相でその実世俗大好きなシミアーヌ男爵夫人(神野三鈴さん)。
綺麗事と本心の乖離具合が楽しい。修道院に入った彼女は真の聖女になったのか?。

サン・フォン伯爵夫人(麻実れいさん)。
快楽と目的達成の為なら悪徳も良しとし堂々と語る。
恥じらい隠そうとする人間の性を露わにする彼女は雄々しく強い。

モントルイユ夫人(白石加代子さん)は、悪を見下し、正義を賛美する。
母として娘の将来を心配しながらも、常に「家名」と「財産」を護る心理が働き、それらを守る為なら悪も善しとする事をいとわない。

そして、主人公のルネ(蒼井優ちゃん)。
心から夫を愛し、穢れ無き真っ直ぐな様は、洗い立ての真っ白なシーツのよう。
だが、舞台が進むにつれ、真っ白なシーツを、真っ赤な血や黒い灰でルネ自身が汚していく。
不浄な猥雑さと無垢で清純な魂が同居する彼女の唱える「貞淑」は「淫乱」に姿を変え。。。

冒頭、訪れたモントルイユ夫人宅で、鞭を振り回しながら、投獄された「サド侯爵」の犯した口にするのは憚られるような罪を、声高らかに述べるサン・フォン伯爵夫人。
夫人の話を、耳を塞ぎ目を瞑りながらも、聞き耳と薄目で話に興味を示すシミアーヌ男爵夫人。
ひとしきり噂話が終わった頃、登場するルネの母:モントルイユ夫人。
モントルイユ夫人は、招いた対極の客2人の持つ「悪」と「聖」の力にすがる。
そこへ、やってきたサド侯爵夫人ルネ。彼女も夫の為に2人の力を貸してもらえるように頼む。
客が帰り、ルネを部屋で休ませ1人になったモントルイユ夫人の所へ、ルネの妹アンヌが帰宅。
喜ぶ母に、「自分は姉の夫とともに旅に出ており、ルネもその事を承知している」と告げるアンヌ。
「夫の行方は知らない」と話していたルネの嘘に激高したモントルイユ夫人は、サド侯爵が再投獄されるよう手を打つ。
数年の月日が経ち。。。
サド侯爵釈放の知らせがアンヌを通してルネに届き、喜ぶルネ。
だが、その書類は数年前に作成されたものであり、夫は母の策で既に再投獄されていると知ったルネは母を責める。
だが、母はルネのある真実を知っており、ルネの「貞淑」への執拗な拘りに対し、ついに禁断の真実を口にしてしまう。
母が、真実を知っているとわかったルネは、「淫乱」な顔で、「世の決めた「貞淑」とは何なのか?、正義も道徳も人が定めたものにすぎず、人定のものを守る為に卑しい事を平気で行い素知らぬ顔をしているあなたの方がよほど汚れているではないか。」と母を責める。

母として、娘と娘婿の犯したクリスマスのノエルを語る時の白石さん。
山姥となまはげと鬼婆を足したような、まさに妖怪!(ごめんなさ〜い)。
(実は、「身毒丸」の時も「ムサシ」の時も、白塗りしたおっきな顔の迫力あるおばさん(ごめんなさい。)のイメージで、他の人の衣装におしろい付かないのかな?と、正直、そっちが気になってた。)

ただ、今回は、台詞の強弱や間など見事な声色変化を繰り出す白石さんに、すごぉぉい!と思った。
同じく、麻実れいさんも、発する台詞とちょっとした動きで、見えない物をその場に呼び寄せ、感覚を通して見せてくれる。
経験と才能でガンガン責めてくる超ベテラン女優さんと丁々発止するのは、優ちゃん。
「オセロー」で彼女の演技を初めて観た時のショックが再び甦る。
テレビや映画やCMからは想像もできない優ちゃんが、舞台には居ると確信。
ふんわりやわらかおしとやか守ってあげた〜い♪なルネが一転、生意気で自信家、目の前のもの蹴っ飛ばしてでも道を切り開くわよ!なルネに変貌する様は、必見。

ベテランさん2人に挑む若手1人、そして実力派3人の織りなす三島台詞に基づく善悪交錯の世界。

この舞台。。。

6人の女優さん達は、麗美な言葉の並んだ長台詞を、各々の「音」と「リズム」で紡ぎ、
互いに絡み合う旋律は、時に不協、時に調和し、様々な色調で観る(聴く)者を三島戯曲の世界へいざなってくれた。
そして、囚われの身であるはずのサド侯爵に捕らわれていたのは、実は自由の身の女達であり。
正義と悪の定義等、常識が180度覆る「コペルニクス的転換」を体感るんるん

「正(聖)」って「悪(禁)」って本当のところは何なのだろふ。。。

およそ4時間のこの舞台。
萬斎さんによる「言葉による緊縛」の演出と、「一言一句を明瞭に、且つ、表情を持った台詞で発する」女優達の力に魅せられた。

萬斎さん、ありがと〜揺れるハート

蜷川さん演出のシェイクスピア。
舞台は北イタリアのパドヴァ。
若くて美しく、財産もあるが、口の悪さと向こう気の強さではこの町いちばんのキャタリーナ(市川亀治郎)を、結婚相手を求めてヴェローナからやって来た紳士ペトルーチオ(筧利夫)がいかに「馴らして」、従順な妻にするのか。丁々発止のやりとりに、キャタリーナの妹ビアンカ(月川悠貴)とルーセンショー(山本裕典)の恋模様も絡む舞台。
『じゃじゃ馬馴らし』
jajauma.jpgと、同列、お気に入りの舞台になったかわいい
posted by みぃみ at 00:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 映画・舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おはよう!。

萬斎版サド侯爵、上演時間からしてサデイスティックだったね!。
あの長〜い台詞を長〜い時間観せて聴かせ続けるキャストさん、観ているお客さん達も「S」のなんたるか!が身に染みたんじゃ?。

そのS具合が心地好くて舞台に魅入ったMが、ここにも(笑)。

私もお気に入りになったよ、この舞台。
萬斎さんLOVE度合いも上昇〜♪。
Posted by 舞 at 2012年03月30日 09:41
舞>おはよ♪。コメ、ありがとう!。
萬斎さん、かなりのSだったね。
舞台に登場しないものの6人の女達を翻弄するサド侯爵同様
舞台で演じる女優さん達を思いっきり縛って(?)た。
縛られた女優さん達が上手いものだから、寝そうになっても寝れなくて、私も舞台を観ることに縛られてたよ(笑)。
同じく心地よい「縛り」だった(^^)。
萬斎さんの次の舞台も楽しみだね☆。
Posted by みぃみ at 2012年03月30日 10:08
こんばんは〜♪

面白そうな舞台だねー^^
ちょっと怖そうな感じもするけど・・・
野村萬斎さんは舞台の演出もしてるんだね!
多才だねー^^(日本語であそぼ、で我が家ではお馴染みだった)

長ぐつをはいたネコも観たの^^感想書いたらまたお邪魔しますね!
Posted by みすず at 2012年03月30日 20:24
みすずさん>こんにちは♪。コメント、ありがとうございます。

>ちょっと怖そうな感じもするけど・・・
はい。
覗いちゃいけない世界が色々登場するので、
ひょえ〜(^^;)と思う事多々です。
なので、男性6人が演じてた時は、通常の生活からのかけ離れ具合に寝ちゃってましたZZZ。。。
ですが、こちらの女性6人版、遠い世界の出来事を
ものすごくリアルに語ってくれるので、睡魔が襲ってきてもなんのその、目も意識も舞台に集中!でした。

>野村萬斎さんは舞台の演出もしてるんだね!
>多才だねー^^(日本語であそぼ、で我が家ではお>馴染みだった)
にゃは♪、ややこしや〜、ですよねっ(^^)。
古典文学や日本語本来の美しさを、イケメンさん(私の中ではかなりなヒット(はぁと)に教えてもらえる子供達、羨ましいです:笑。
番組の「音」としての日本語の魅力を伝えたいというコンセプトは今回の舞台でも威力を大発揮していたと思います。

もし何かの機会がございましたら、蜷川さん演出の「じゃじゃ馬ならし」ご覧になってみてください。
顔が、ず〜っとにこちゃんマーク状態になれますよっ!。

みすずさんの「長ぐつをはいたネコ」の感想、拝見させていただくの、楽しみに待っています♪。
Posted by みぃみ at 2012年04月02日 11:08
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