
舞台:「死刑執行中脱獄実行中」。

原作:荒木飛呂彦/短編集「死刑執行中脱獄進行中」
構成・演出・振付:長谷川寧
共同振付:森山未來
音楽監督:蔡 忠浩(bonobos)
衣裳:山本亜須香(FUGAHUM)
美術:杉山 至
照明:奥田賢太(colore)
音響:天野高志
演出助手:河内 崇、矢本翼子
振付助手:高谷 楓、傳川光留
舞台監督:谷澤拓巳、高橋大輔
鑑賞前に「死刑執行中脱獄進行中」に加え「ドルチ〜ダイ・ハード・ザ・キャット〜」の両方の原作を読んでおいて方が楽しめるとの情報を得、予習してからの鑑賞。
前者は、殺人の罪で死刑判決を受けた囚人27号が収監された牢屋は、立派な調度品に豪勢な食事が完備してあり、ホテルの部屋のよう。囚人はリラックスしようと、部屋の電気を点ける。その瞬間指に痛みが走る。蜂に刺されたのだ。食事を食べれば爆発が起こり、脱出しようとすると壁に指を切断される。そう、その立派な部屋こそが死刑執行室だったのだ、というお話。
後者は、愛猫と一緒にクルージングに出発した雅吾は、自分のヨットに乗ってきた女性に誘惑され、舵を誤り遭難。女性はおぼれ死ぬ。何日経っても来ない助けに、水は尽き…。
同じように喉が渇いてきた愛猫と水を争ううち、流血。血で口を潤した雅吾は、水の替わりに愛猫の血を得ようとし、愛猫も雅吾の血を得ようとして死闘が繰り広げられるお話。
舞台にあるのは、「様々な形の鉄骨の枠」・「布」・「水の入ったボトル」・「天井からぶらさがる電灯1つ」。
音楽や効果音は、生演奏。
これら数個の道具達とパフォーマー達の身体表現と楽器音が融合して、処刑室・海上へ場面転換することはもとより、各種生活調度品・船・水・猫等を表現します。
囚人27号であり雅吾でもある森山未來君は、処刑室に仕掛けてある様々な罠に翻弄され、船上では愛猫と戦い、船上で死んだ女性の亡霊にも悩まされます。
演じ手は未來君とダンサーさん5人と赤いドレスの女性1名。
青と白のダズル迷彩柄のタイツを身に纏ったダンサーさん達は、処刑室のポスターガイストをおこす得体のしれないものや調度品、波、船、等に次々姿を変え…。
物理的危機と精神的危機に囚人(雅吾)を呑みこもうとし、それに抗う囚人(雅吾)を未來君が演じています。
舞台前方で演じている未來君の姿を舞台後方に大きく広げた布に映し、さらにそこに映像を重ねることで、
水中でおぼれている様子を表現したり、ダンサーさんの身体を組み合わせることで猫の形を影絵のように映したり。
布と絡み合うダンサーさんの動きで、囚人を、死の淵に引きずり込む様子を表現したり、
恐怖や攻撃から逃げまどう様子を、人力で動かしている金属の枠をすりぬけたり転がったりして表現したり。
人間の身体ってこういう形にもなるのね、と、後ろ半分に折り畳まれたり、頭だけで倒立して1回転する未來君やダンサーさん達を見ながら、思いました。
ふわっするっくにゃっばしっしゅるしゅるしゅる〜、様々な擬音を肉体が発していました。
感覚で感じる音や台詞に、感嘆…。
肉体を使っての表現の可能性って無限大だわ…とも。。。
「光」と「音楽」と「肉体」の持つ力に圧倒された90分でした。
素晴らしかったです

2015年を締め括るエンタメがこの作品で良かったです。