平成22年9月21日(火)
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本:「民王」。
著者:池井戸潤
2010年5月25日第1刷発行。数日前、政権与党総裁選が行われ、新内閣が誕生した日本。
「国が良くなるように、民意に沿った政治を行う」と宣言した新しい閣僚の方々の力量が発揮される事を願いつつ…
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漢字読めないぞ総理大臣
も、よっぱけ酩酊会見
も、突然の不倫行為の告発
も、本当は巧妙に仕組まれた陰謀が要因だった
。
読み進めながら、何度も、うはははっ
と笑った。
民政党の幹事長、武藤泰山は、総理大臣:田辺靖から首相辞任の決意を告げられる。前任の安西滋に続き任期半ばの政権放棄である。
安西の所信表明後、間もない突然の辞任に、支持率は急落
。
参議院選挙で野党第一党の憲民党に過半数を奪われ、衆参で第一党が異なるねじれ国会を生んだ急場だというのに…。
腹を括った泰山は、自ら総裁選に立候補。
党内のボス:城山の後押しを受け、見事、総理大臣の職を手に入れる
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所信表明のパフォーマンスが好評で内閣の支持率は上昇
。ニンマリほくそ笑む泰山達民政党の面々。
そんな折、国土交通大臣の江見による連合への暴言問題が勃発
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発言を撤回しない江見を、新内閣発足後、たった五日で更迭する羽目になり、野党から国会で任命責任を問われる泰山。
宿敵:憲民党の蔵本志郎の矢継ぎ早な詰問への答弁中、泰山に聴こえ始めた妙な声…。次第に遠のく意識。。。
一方、泰山の息子、武藤翔は六本木のクラブにいた。
学生でありながら事業に成功した南真衣の誕生日パーティーだ。
煙草と酒、喧噪の中、超美人のエリカを口説きにいく翔。
だが、翔の事をバカにし、鼻持ちならない態度のエリカとやり合ううち、翔の脳裏に妙な声が聴こえ始めた。意識が遠のく翔。。。
気付いた時、翔は、国会の答弁所に立っており、泰山は、薄暗い店の中で訳も分からないまま若い男に絡まれる。
泰山と翔、翔は総理大臣である父親:泰山に、泰山は学生である息子:翔に入れ替わってしまったのだ。
総理大臣に就任し、これからが大事な時に学生の姿になってしまった泰山と、就職活動中に年配の男、且つ、国の代表である総理大臣になってしまった翔。
慌てふためく二人は、官房長官:狩屋に事態を説明。第一秘書の貝原にも協力をあおぐ。
当面、狩屋と貝原が補佐&原稿を担当し、凌ぐ事になるも、まともに勉強をしてこなかった翔は漢字が読めない。
アホ総理の烙印を押される泰山
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更には、経済閣僚会議に出席した鶴田経済産業大臣が酔っ払ったまま意味不明の内容で記者会見に応じる模様が生中継される
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下がる支持率
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政権批判に沸くマスメディア
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実は、鶴田も息子のワタルと入れ替わっていたのだ。
調べるうち、防衛大臣からCIAの最先端技術が盗み出され、その技術が脳波を操るものだという情報が入る。
又、四人共、同じ歯医者で治療を受けており、その医師が行方不明だという事も判明し、公安の新田の力を借り、犯人捜しに乗り出す泰山達。
泰山が、翔の姿でエリカ口説き落とし、遂に一夜のアバンチュールへなだれ込み〜っ
へのどんでん返しに大爆笑。あぁ…燃え上がったこの思いはどこへ
:爆爆。
まさか、エリカが○○だったとはっ!!。
犯人だと思っていた蔵本も被害者だと判り、更に、深まる謎
。
解決を模索しつつ、支持率回復、外交、国会運営、就職活動、学生生活と、各々逆の立場で奮闘する翔と泰山。
そんな折、週刊誌に狩屋との不倫を告白する記事が掲載され、ますます、叩かれる武藤政権。
世論という名の下、辞任を迫られる狩屋。
ここでの翔は、本当にカッコイイ
。
「プライベートはともかく、官房長官として狩屋は優秀で国のためにかけがえのない人材だ、くだらない恥にばかり目を向けずに、もっと有意義な国を良くする為に討論しようぜ!」と、一喝。
就職試験に行った泰山も…。
どうしようもないバカ息子である翔の、会社への志望動機を読むうち、若い頃、政治の世界を志した時の自分の信念を思い出していく。
「誰かの幸せの為に働きたい。」この優しい気持ちを利用したのが共和党。
製薬会社と癒着して、儲ける為に、新薬承認制度をマニフェストに記載。
全ては、薬の承認に慎重な民政党と憲民党を転覆させる為に仕組んだ罠。
「救える命を救う」を題目に唱えるも、目的は「金と政権」。
南真衣。彼女が起業し爆進し続ける裏にある、哀しい過去さえも利用した共和党…。
全てが明るみにでた時、泰山は…。
あははっと笑って、おいおいと呆れて、頑張れって応援して、しんみりして。
よっしゃ!いけっ!、それでこそお国と政権を担う大臣だっ!&うん、うん、よかったね〜と、ほんわか幸せ気分になれる本。
斜め45度じゃなく、真っ直ぐ向き合って読める。
奮起した泰山のように、「選挙で勝つ事」からは一旦目を離し、「国民の為になる事」をしっかり見据えた政治家さんには、自然と票も集まるのかな〜?なぁんて思ったりなんかした(^0^)。
好きだな。この本
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