平成26年7月18日(金)
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舞台:「カッコーの巣の上で」。
【原 作】ケン・キージー
【脚 本】デール・ワッサーマン
【演 出】河原雅彦
【キャスト】
小栗旬(ランドル・パトリック・マクマーフィ)
神野三鈴(看護婦長ラチェッド)
武田真治(デール・ハーディング(患者))
大東駿介(ビリー・ビビット(患者))
山内圭哉(チーフ・ブロムデン(患者:インディアン))
藤木孝 (スカンロン)
吉田鋼太郎(ドクター・スパイヴィ)
福田転球(マーティニ(患者))
吉田メタル(ラックリー(患者))
伊達 暁(ウィリアムズ(看護人))
櫻井章喜(ウォーレン(看護人))
駒木根隆介(チェズウィック(患者))
木下あかり(ミス・フリン(看護婦))
八木のぞみ(キャンディ・スター(マクマーフィのガールフレンド))
江戸川萬時(タークル(夜警))
長田奈麻(サンドラ(キャンディの女友だち))
【ストーリー】
− がんじがらめの垣根から、三羽の雁が飛び立った。 −
− 一羽は東。一羽は西へ、一羽はカッコーの巣の上を。 −
− 出るに出られぬ羽無し鳥、雁がくわえて引っこ抜く。 −
刑務所の強制労働から逃れるため精神異常を装ってオレゴン州立精神病院に入ったランドル・マクマーフィ。
そこで行われている管理体制に反発を感じた彼は、絶対権力を誇るラチェッド婦長と対立しながら、入院患者たちの中に 生きる気力を与えていく。
その病院こは、デール・ハーディングを中心に患者たちが無気力に収監されていた。
精神病というだけで、患者の人間性までを 統制しようとする病院から自由を勝ち取ろうとするマクマーフィは、ネイティブアメリカンでしゃべれないふりをしていたチーフを誘って脱走を試みようとするが、チーフはその勇気がないといったん断る。
あるクリスマスの夜、女たちを病院に連れ込み可愛がっていたビリーを含む患者仲間達とどんちゃん騒ぎをしていたマクマーフィ。乱痴気騒ぎの場には婦長が…。
ラチェッドから激しく糾弾されショックを受けたビリーは、自殺。
ビリーの死は自分の責任では無くあなたのせいよマクマーフィー、と、勝ち誇るラチェッド。
激高したマクマーフィは、ラチェッドを絞殺しようとし、隔離病棟へ…。
数日後。。。
戻ってきたマクマーフィは、ロボトミー治療により、廃人になっていた。
それを見たチーフは彼を窒息死させ、「持ち上げた者には奇跡が起きる」とマクマーフィが言った配電盤を持ち上げて窓を破り、精神病院を脱走していく。
60年代の精神病院を舞台に、体制の中で抗う男の姿を通して人間の尊厳と社会の不条理を問うK・キージーのベストセラーを舞台化した作品。舞台の上には、やんちゃな気骨あるおっちゃんマクマーフィーがいた。
昔の西部劇に登場するような他所からやってきた根無し草。
よそ者ゆえ、その地の不自然さがよく見え、その不自然さに立ち向かう。
大きな権力に強い気骨で抗う姿に、彼の周りには人が集まり力を貸すようになる。
開放された空間の街なら、彼の勝利は確実。
けれど、ここは閉鎖された空間の精神病院。
君臨する権力は絶対であり、男らしい彼の人柄さえも、彼自身の命取りになった。
今回、「時計仕掛けのオレンジ」以来の川原さん演出の小栗君主演の舞台。
「時計仕掛け」は、犯罪を繰り返して喜ぶ青年が、パブロフの犬のように意識強制され、自らの意思とは無関係に真っ当にさせられるお話で、精神洗脳って怖いけれど、非常識すぎる若者は、強制されるべくしてされたんだろうって思う作品だった(結末は、意識洗脳が解かれて元に戻るのだけれど…。戻らなくていいんじゃない?、と正直思った)。
今回も精神強制のお話で、話の展開と結末をあらかじめ把握してあった為、マクマーフィーの行動に、ひやひやして、最後、何とももの悲しい気持ちの劇場からの帰路。
一眠りして、翌日、2回目の鑑賞。。。
映画版で、ジャック・ニコルソンがマクマーフィーを演じ、過去にも舞台化され、「名作」と言われているらしい。
「名作」かどうかはわからないけれど、色々考える作品だった。
1度目の鑑賞後は、マクマーフィーに対し「雉も鳴かずば撃たれまい」と思い、大人しくしていたらよかったのにと思い、彼と共に生活した患者さん達はマクマーフィーのおかげで人としての活力を手に入れてこれから自分の人生を再出発するんだろうな…と。
マクマーフィーに悲哀、他の患者さん達に希望を感じた。
2度目の鑑賞後は、ちょっと印象が変わった。
結局の所、マクマーフィーに賛同し、人としての活力を手に入れたのは病院から去ったチーフ1人であり、他の患者達はマクマーフィーの死によって、取り戻しかけた人としての尊厳を再び失い、これから先もあの閉鎖された精神病院の中で安穏と生きていくのではないのかな…と。
となると…。
マクマーフィーは、死という形ではあれ、自由を獲得できた者。
チーフは、自由を獲得しあてのない未来へ進んでいく挑戦者。
残った患者達は、ひとときのイベントを楽しんだだけの精神病患者。
になるのかなぁ、と。
ラチェッド婦長は独身子供無し、で、精神病のとりまとめ役。
彼女の生きている意味は、自分の働く精神病院で、自らが女王として君臨する事。
握った権力で自分の立場、生きてる意味を確保する為になら、何でもする。
言われたとおり行動する精神病患者とラチェッド婦長、どちらが異常者なんだろう?。
奇妙なルールに抗うマクマーフィーと、変な状況下にある事を知りながらそこで生活することを望む者達の、どちらが「人間らしい」んだろう。
人格をつかさどる前頭葉を他の脳部分から切り離すロボトミーって恐ろしいと思った。
物理的に「生きているだけ」のものをつくって、治療と銘打つなんて。
人格が切り離されて、自己表現できない状況で生きるって死ぬより辛そう…。
ウサギは狼にあらがわない。人間性をジワジワ攻めて壊していく恐さ。
生き長らえる方が怖い。飼い殺しって残酷…。
マクマーフィーは、患者達にその事を気づかせたから、救われたんだよね。
死という形でも、自由になれた。
人は、このままじゃいけなくても、このままならこれ以上悪くならないと感じると、立ち止まる。
前進や立ち上がる気持ちがなくなる。
誰かを傷つけたり、虐げて自分を守るって、寂しいね。
お山の大将でいたかった婦長、ぬるま湯ながら自分達の場所を守りたかった患者達。
ていよくインディアンを追い出した彼等は、どうするんだろう。。。
山内圭哉さん演じるチーフ。
耳が聞こえず口もきけない役なので、ほとんど喋らず。
表情と動きで過去の体験と今思っている事を表現。
さっすが、上手いっ!!。
寂しさ・恐怖心・怒り・希望を見事に演じ分け。
大真面目な動きが時々めっちゃコメディになるのも、楽しい♪。
武田真治君演じるハーディング。
映像の世界では不思議な人を演じる事が最近多い彼。
年齢相応の、ちょっぴりコンプレックスを持ってるものの、みんなのまとめ役である落ち着いた紳士なハーディング役も合っていた。
顔ちっちゃくって、かけてるメガネを外すとおめめキラキラで、アイドル☆オーラもバリバリ放ってた。
神野三鈴さん演じる看護婦長ラチェッド。
「ボーイズ」と自分の患者達を呼び、彼等の為に良かれと思う事を行う。
患者達の為の業務については、部下に完璧を求める。
まるで、母親のように思える、厳しくも優しい声と仕草。
無償の愛というオブラートの中身は、冷酷で残酷な支配欲。
飴と鞭の変形版のようなラチェッドのそれは、背筋が凍るようだった。
あなたのためにといいながら、じわじわ切り刻む…。
一幕目のラスト、静かに怒りの炎を燃やすラチェッド婦長と目が合っちゃって、ごめんなさいって言いそうになった。
吉田メタルさん演じるラックリー。
彼は、ロボトミー手術を施術されてしまった患者で…。
現れたい人格が、脳の中で遮断され、思うように動けないもどかしい苦しみに溢れていて、見ているのが辛かった。
とても難しい役なのだと思うけれど、違和感の無さゆえ、正常な人間が異常者に施すロボトミーという手術の異常さに怖さを感じた。
正常と異常の違境界線って何だろう?と思った。
2幕目が始まる前、ラックリーがシュートゴールになって、みんながバスケットをするの。
顔にボール当たったらどうするのよ…と、ちょっと引きつつ…。
7月13日お昼の部、大東君演じるビリー、スリーポイントキメてた(拍手)。
会場も大盛り上がり、大東君も本気で喜んでたと思う♪。
吉田鋼太郎さん演じるドクター・スパイヴィ。
安定感の鋼太郎さん。声色で全てが伝わってくる。
吉田さんめっちゃいいお医者さんで普通の男の人なの、久々、面白い。
抜群の間!で、ばっちり、笑いもとってらっしゃった。
マクマーフィーの保護監督者的なスパイヴィが、小栗君の良き先輩俳優の吉田さんな構図と重なって、微笑ましかった。
大東駿介君演じるビリー。
吃音で、母親に支配されちゃってる男の子、を上手に演じてた。
普通に大人になっていく男の子な顔が、母親の期待という支配によって縮こまってしまっている。
自分のやりたかった事、大切だと思った事は、ハキハキ喋れるのに…。
彼の縮こまってしまった部分を、自信の権力保持の為に壊しちゃったラチェッドは、鬼だわ。
小栗君演じるマクマーフィ。
マクマーフィーという男は、感情豊かでやんちゃに生きるも人情に厚いという事が、彼の演技から容易に理解できる。
目口鼻眉毛頬、手、足、身体全部でマクマーフィーを表現。
演じてますっていうのではなく、マクマーフィーという男が、舞台上にいた。
煙草のくわえ方、持ち方、消し方、火の点け方に至るまで、小栗君の動きを見ていると、マクマーフィーがどんな男か、よくわかる。
小栗君、背が高いので、ほとんどの人を見下ろす形になるのだけれど、対する相手やその時のマクマーフィーの気持ちで、見る角度や目線に変化がついている。
ステージからはける時も役のまま。ため息や舌打ちが、ふわっと聞こえてくる。
きちんとした滑舌と発声、毒されていない演技ゆえ、
マシンガンのような喋りも、ちょっとはすにかまえた話し方も、激しい怒りも悲しみも、気持ち良く伝わってくる。
クジラの絵のついたブリーフいっちょになって、腰をフリフリした時は、目のやりばに困ったけれど(あ、困ったのは初見の時だけ・ね)、ふんだんにある下ネタも、世の男性のあるべき姿なのだと受け入れる事ができる。
「お気に召すまま」のキラキラ少年から、「髑髏城」にて看板しょって絵になる人に、そして、この作品では、周りと調和しながら観てる人を表現の世界に牽引していくことのできる俳優さんに、成長したね〜〜、小栗君。
これからの俳優小栗旬も期待大☆!!!。
3時間、ずっと舞台に見入っていた作品。
とてもとても素晴らしかった
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最高!!!。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜小栗くん、汗だく青シャツからの上半身裸、ブリーフいっちょの腰ふりに、Tシャツ腕まくり。
うーっっ!!てなると、首に浮かぶ筋肉、色っぽい
。
背中も腕も足も、力入れたら筋肉が浮かび上がるの。
歌も口笛も変態親父な動きもちゅーも口説いてる姿も、全部いただきました
。
※わたくし、煙草の煙にむせちゃう人なのですが、小栗君ほぼずっと煙草吸ってて、5列目と8列目というとっても幸せな席なので、とってもとっても煙草の匂いと煙を吸い込む事になったわけですが、その煙と匂い、普通に受け入れる事ができてました。
洋服と肺にたっぷり染みこんだその煙草の匂いは、今も、目を閉じるとこの作品を観た時の感覚にいざなってくれてます。
記憶と匂いのリンク。。。?。
カテコ。。。
武田真治君にぶつかるのは、おきまりなのね:笑。
マクマーフィーから戻った小栗くんに、カテコ1日目はちらっと、2日目はニコッな視線いただいて幸せ
。
目を閉じればそこにはステキな肉体美と笑顔。
うっとり〜
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追伸:
こちらの作品も男優さんのお尻拝見しました。
大東君、ビリーの…。。。
深刻な場面なので、お尻の事、忘れていました、よって、追記。